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    不条理は父から娘に。そして娘から父へ。

    (――7年前)
    「なァ璃莉、パパな、お前が産まれた時、ママに約束した事があるんだよ」
    病室のベッドで人工呼吸器を外された妻を見つめながら、彼は泣いている幼い娘に告げる。
    「『この子が幸せになるマンガ――』『世界中の子供達に堂々と読んでもらえるマンガを描く』ってな」
    痩せこけた母の手に触れながら、少女は黙って父の話を聞いていた。
    「ママも楽しみにしていたけど・・間に合わなかった。璃莉が初めて読むパパのマンガはそんなモノにしたい。待っていてもらえるか?」
    「・・・うん」
    「じゃあ今度は璃莉と約束だ。パパ頑張るから。頑張るからな」

    町田ひらくの『紙の襞』(雑誌『コミックLO 2016年1月号』に収録)でそんな宣言をした父親は、「ロリータ凌辱モノ」を描くエロ漫画家でした。
    紙の襞
    「街留多 拓(まちるだ たく)」というペンネームの彼は、ロリエロ漫画家としてはかなり売れっ子らしいのですが、だからこそ「世界中の子供達に堂々と読んでもらえるマンガ」を描く一般漫画家になるのは難しそうですよね。
    そんな中、父は自分の娘そっくりの少女が凌辱されるエロ漫画を描きながら、夢が叶うチャンスを待ち続けていたのです。
    この時点で彼の心の中に秘められた実娘に対する「禁断の欲望」がどれだけあったのかは分かりませんが、そうした「禁忌の感情」が現れるのは「非現実」の漫画の中だけであり、「現実」には「親」として接していましたし、もちろん自作の「ロリエロ漫画」を読ませることもありませんでした。
    しかし、彼の読者はそうは思わなかったのです。

    イベントで「街留多先生」の顔を知っていた男は、自分が教師を務める小学校の女児の父親の顔を見て驚く。
    (阿波野璃莉の父親が・・街留多拓?)
    (我々教育者がまるで――)
    (教え子を犯す目的で教職に就いているかの様なマンガを描く男にこんな娘が――)

    (何もしてないワケが無い――)

    この教師は「父親の描いている漫画」をネタに少女を脅して、セックスすることに成功します。
    教師の想像通り、璃莉は処女ではありませんでした。
    しかし、その相手は父ではなく、「読者」たちだったのです。
    宅配便の兄ちゃん、床屋のおじさん、病院のじいさんセンセイ。
    父の作品を知る「読者」によって、彼女はずっと犯され続けてきました。

    「お父さんからムリヤリだった?」
    (同じ事を何人からきかれてきた事か)
    「イヤじゃなかった?」
    (信用する気もないくせに)

    その日、少女は初めて父の原稿を読ませてもらった。
    「パパ、電気消して」
    「読み終わった?」
    「うん」
    バースディケーキのロウソクの明かりを挟んで向かい合って座る父娘。
    「11歳の誕生日おめでとう」
    「ありがとう。パパも子供の本でェ、連載決まってェ、おめでとう」
    「ありがとう。随分遠回りしたけど約束を果たせた。ママが読めなかったのは残念でならないけど、お前を育ててきたありのままを描くつもりだ」
    赤ん坊の璃莉を抱いた妻との家族写真を眺めながら、感慨深げに彼は愛する娘に告げた。
    「やっと璃莉に漫画家として本名名乗れる」
    「主人公のフルネーム、マチルダ・リリーにしない」
    その言葉で父の顔から表情が消え、娘がロウソクの火を吹き消す。
    (パパの瞬きが聞こえた気がした)
    「ガッカリしないでね」
    真っ暗な部屋で椅子から立ち上がった少女が父の前で服を脱ぐ。
    「五歳の時の話からするね」

    ここで物語は終わります。
    父親は実娘をモデルにしたような少女を凌辱する「エロ漫画」を仕事として描いていただけであり、未成熟な裸身を晒した娘から「凌辱経験」を聞かされても、「禁忌の劣情」を「現実」にするかは分かりません。
    しかし、「読者」という「第三者」の存在によって、少女は父親の「欲望」に犯され続けながら、父親の「愛情」をずっと守り続けてきたのです。
    父の夢が叶った11歳の誕生日に、彼女はどんな「想い」を解放するのでしょうか。


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