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    狂おしく痛ましい愛の物語。

     太平洋の真ん中、赤道直下に浮かぶ、名前のない小さな島。そこには教会があり、神父とわずかな島民が暮らし、訪れるどんな二人も祝福され、結婚式を挙げることができる。同性愛、近親愛、不倫愛、そこではあらゆる愛がゆるされる――その二人が、ほんとうに愛し合っているかぎり。
     その島を訪れる、父親と娘。それから姉と弟。ある者は愛の存在証明のために。またある者は不在証明のために。様々なものを見失って渇いた者たちの、いのちと時間がその場所で交錯する――。


    ずっと気になっていた杉井光の小説『すべての愛がゆるされる島』のブックカバーには、こんな紹介文が書かれています。
    すべての愛がゆるされる島
    普通の世界では「ゆるされない愛」として「同性愛」と「近親愛」と「不倫愛」が挙げられていますが、その「禁忌性」は随分違いますよね。
    「不倫愛」なんて珍しい話ではないし、その後離婚して正式に結ばれる場合も多いです。
    「同性愛」になるとかなりハードルが高くなりますけど、最近ではTVでオネエ芸能人が多数出ていることもあって「異常」と言えるものではなくなってきているし、海外では法的な結婚まで認めている国もあります。
    やはり、「ゆるされない愛」と言えば「近親愛」でしょう。
    実際、この物語の語り手となるのは父・娘・姉・弟であり、そこで語られる「愛」とは禁断の「父娘愛」と「姉弟愛」です。
    アダルト小説ではないためセックスシーンは描かれていませんが、「近親相姦」による子供も生まれます。

    いろいろと秘密が隠された小説なので詳しい内容はぜひ読んで確かめて欲しいのですけど、基本的に男がグジグジ悩んで女が突き進むという構図になっています。

    かつて不倫相手とこの島を訪れて扉が開かなかった男が今度は美しく成長した娘に連れられて再来した。
    自分は娘のことをどうとも思っていない、ただ性欲を感じているだけだと彼は神父に告げる。
    「あなたの、その性欲が」
     神父は海に向かって言った。
    「愛ではないと、だれがいつ証明したのでしょう」


    「性欲」と「愛」の関連性というのは、「近親相姦漫画」においても重要ですよね。
    相手を求める「欲望」の中に「愛」は存在するのか?
    はたしてその「存在」や「不在」は証明できるのか?
    そのテーマが宗教における「信仰」と絡められながら考察されます。

    短い章立てで語り手が次々と変わりながら物語が進んでいきますが、じつはそこにはトリックが潜んでおり、叙述トリック大好き人間の自分はその二段構えの仕掛けを楽しませて貰いました。
    「あらゆる愛がゆるされる」と言っても「ほんとうに愛し合っているかぎり」という条件があり、教会の奥にある扉を開くことが神に認められた証明となる。
    そんなファンタジックな設定があり、その他にも島民からミステリアスな話が語られますが、最終的に彼らが辿り着くのは陳腐な「屁理屈」と「現実」。
    いろいろ格言めいた言葉が出てくるわりには「愛(近親愛)」についての考察が浅く、明確な「答え」の出ない結末に不満を感じる読者もいるでしょうが、「家族愛」を内包した「近親愛」はあらゆる愛の中でも特別に難しい感情であり、「答え」が出ないのが「答え」なのだと思いました。

    「だって、存在証明の失敗は不在証明にならないんでしょ」

    「そうだよ。ほんの一ミリグラムの望みは、絶望の千倍つらい」



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