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    「禁忌」の発生条件

    (幼い頃から「くさい」と後ろ指をさされ、凄惨なイジメを受けた)
    (外に出ても辛いことばかり・・・僕たち姉弟は家にこもりがちになり――)
    (いつの頃からか)
    (心の隙間と有り余る時間を埋めるように)
    (来る日も来る日も)
    (お互いを慰め合うことに没頭するようになった―――)

    白石なぎさの『姉の香は悲しみの衣』に登場する姉弟は、辛い境遇の中で「禁断の関係」になりました。
    姉の香は悲しみの衣
    (甘い姉の「におい」が唇から伝わってくると、僕は妙な安心感に包まれる)
    (「私も同じよ」と姉も言った僕たちの「におい」――その根源が)
    (この家にあると気が付いたのは)
    (三年前、母が逝った頃――生まれて初めて何日も家を空けた時だった)

    弟の重たいモノローグで始まる物語は、この後も同じような調子で進んでいきます。

    母が亡くなって以来、バイトをしながら弟とふたりで暮らしている姉。
    家賃2万5千円の薄汚い集合住宅。世の中のイベントなど無縁で、生きる為だけに必死な日々。
    夢も希望もない生活を送っている自分達を弟は“生まれながらの敗者”と呼ぶ。

    ある日、そんな境遇に変化が生じる出来事があります。

    「あたし・・今度 正社員になれるのよ!!」
    バイトから帰った姉が興奮した様子で弟に告げる。
    「えっ・・・!?」
    「今日、店長さんから話があって、この春から店長候補として働けるの・・!」
    涙を流しながら喜んでいる彼女。
    「私・・中卒だけど、学歴なんかじゃなく、この三年間の頑張りを評価したい・・って! これで福利厚生も受けられるし、太一を大学に行かせることだって出来るわ・・!!」

    姉の就職先は決して明るい将来が約束されたような一流企業ではない。
    そのことを理解しながらも少年は「おめでとう」と祝福して、姉とセックスをします。

    (僕らはこれまで幾度となく肌を重ね合わせてきた)
    (僕がひどい怪我をして帰った日も)
    (姉が裸足の手ぶらで帰って来た日も)
    (ふたり震えながら夜を待った日も)
    (僕らはいつも傍にいた)

    (初体験の時から僕は姉を一人の女性として見ていた・・・)
    (いま僕は忌まわしい過去と訣別して、姉と共に明日へと旅立つ切符を手に入れたんだ!)
    (喜ばしいハズなんだ!)
    (・・・なのに)
    (何故 僕は後ろ髪を引かれているのだろう・・・)

    心に貼りついた漠然とした不安を振り払うように彼は姉と激しく愛し合う。
    「ねえ・・春が来たらココを出よう?」
    「えっ!?」
    「ココには辛い思い出がいっぱいあるから・・・大学なんて行かなくていい。姉ちゃんの職場近くに越して僕も働く・・!!」
    (これは「提案」じゃない・・・)
    「うん、いいよっ! 太一がそう・・望むなら!!」
    (僕自身の「決意」だ――!!)

    そうして少年は「大人になってもどこにも行かないでねっ、お嫁さんなんかもらっちゃヤだからねっ・・!」と切なげに叫ぶ姉の膣内に射精するのでした。

    四月某日――。
    引越し先での新生活を始めた姉弟がキスをする。
    (―――あれ!?)
    少年が覚えた違和感。
    (大好きな姉ちゃんの「におい」が・・・・・)

    絶望の中で結ばれた姉と弟の「近親愛」。
    悲しみの記憶と直結した「におい」が薄れていく時、ふたりが求める「幸せ」も変わっていくのかも知れない。
    そんな予感をはらんだようなラストでした。


    白石なぎさは多くの「近親相姦漫画」を描いていますが、その視線はどこか冷めていて、独特の切り口の作品が多いような気がしますね。
    『姉の香は悲しみの衣』もなかなか読みごたえがある良作だと思いました。


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    2件のコメント

    [C298] このラストは…

    切ないものの、近親相姦に走る理由も含めてとても説得力がありました。
    白石なぎささんは、物語も文学的で(その分モノローグが多いですが…)、女性の体格も普通で良い意味で庶民的なんですよね。(やたら爆乳とか、ディフォルメされた絵柄は苦手なので…)

    最近は、あまり近親ものを書いていないようなので、寂しい限りです…
    • 2013-04-10
    • 近親万歳
    • URL
    • 編集

    [C299]

    近親万歳さん、こんばんは!

    本文にも少し書きましたが、白石なぎさは「近親相姦漫画」に対するスタンスが他の作家とは少し異なる感じで、それが作品の味になっているのかなと思っています。
    それだけに、また近親モノを描いて欲しいですね。
    • 2013-04-11
    • 大橋零人
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    • 編集

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